国産グループウェアのツートップと言っても過言ではない「デスクネッツ」と「サイボウズ」。企業のグループウェア選定でこの二つで頭を悩ませる社内SEの方も多いはずです。
ここでは他のグループウェア比較サイトには無い選定のポイントをご紹介し、現段階でベストなグループウェアがどちらなのかを決めてみたいと思います。
「デスクネッツ」「サイボウズ」は日本国内において長く愛され続けてきたグループウェアの2大巨頭です。
長い歴史の中で何度となくバージョンアップを繰り返し、「あと、何の機能が必要なの?」というくらいどちらもグループウェアとして必要十分な機能を備えています。
そして、どりらもクラウド型がメインとなりつつあります。クラウドサービスということは、購入時点の不具合や実装されていなかった機能は、マイナーバージョンアップごとに随時搭載されていくということです。
サイボウズが安否確認機能を搭載すれば、デスクネッツもすぐに追いつき、デスクネッツがHTML5に対応すればサイボウズもすぐに追いつくでしょう。
開発コンセプトにも大きな違いが無いので、現在はもちろん、今後も機能的に大きな差がつくようなことは考えられません。
つまり、今更機能で比較しても仕方ないのです。
ただし、同じグループウェアと言ってもGoogle Appsはちょっとコンセプトが異なります。(詳しくは「このデメリットが無ければGoogleAppsが最高のグループウェアだった」)
社内SEの視点から見て、両者の選定の際に比較すべき大きな違いをまとめてみました。
筆者的にメリットだと感じた項目が赤く塗りつぶした部分です。
比較項目 | デスクネッツ Neo | サイボウズ Garoon3 |
---|---|---|
1ユーザー月額 | 400円 | 800円 |
スマホ対応 | スマホ用画面を用意 | 専用アプリ |
インターフェイス | 直感的操作ができて見た目もかっこいい | ちょっと古臭い |
ワークフロー設定 | 設定が面倒 | 階層組織のフロー設定が簡単 |
ガラケー対応 | × | ○ |
バックアップ | × | ○ |
製品改修頻度 | ふつう | 高い |
会社の対応・姿勢 | 丁寧に泥臭い対応をしてくれる | ドライでシステマティック |
表を見ただけならサイボウズの方がメリットが多いような気がしますが、そんなに簡単には結論づけられないのです。表からは読み取れない部分が多いので、以下で詳しく見ていきます。
グループウェアはほかのシステムと違い、長期間運用することで効果を発揮していくものです。
サイボウズやデスクネッツを検討するということは、それなりの規模の企業であり今後も長いスパンで使用していくことを想定していることでしょう。
例えば500アカウントを5年間使用すると考えたとき
運用期間 | デスクネッツ Neo | サイボウズ Garoon3 | 差額 |
---|---|---|---|
1か月 | 20万円 | 40万円 | 20万円 |
1年 | 240万円 | 480万円 | 2400万円 |
5年 | 1200万円 | 2400万円 | 1200万円 |
と5年間で1200万円の差が生まれます。
この1200万円の差を埋めるほどのメリットをサイボウズGroon3から見出せるかどうかが選定のカギになります。
どちらもスマートフォンには対応していますが、その対応方法が異なります。
デスクネッツはスマートフォン向けのWebインターフェイスを準備しているので専用アプリがありません。一方サイボウズは専用アプリからアクセスする形となります。
この両者の違いと、それによって生じるメリットデメリットをまとめた表が以下のものになります。
比較項目 | デスクネッツ Neo | サイボウズ Garoon3 |
---|---|---|
専用アプリ | × | ○ |
プッシュ通知機能 | × | ○ |
オフライン時の閲覧 | × | ○ |
アプリのバージョン管理 | ○ | × |
デスクネッツはプッシュ通知ができませんが、予め自分の携帯のアドレスを登録しておけば、各種通知をメールで知らせてくれるのでプッシュ通知の代替策となります。
一方、専用アプリを持つサイボウズの大きなメリットは地下鉄などの電波状況が悪い場所でもスケジュール確認ができることです。専用アプリならではの細かな機能があるので、移動が多いユーザーにはありがたいものです。
しかし筆者はこのメリットには懐疑的で、むしろ専用アプリがあることで、Android端末のややこしいバージョン管理やユーザーからの問い合わせ対応による負荷の方が大きなデメリットになる気がしています。
サイボウズのスマートフォン用アプリは、オフライン対応の為にローカルにデータを抱えることになります。会社でスマートフォンを支給していない場合、個人のスマートフォンからアクセスするユーザーも出てくることを考えると、スマホのローカルにデータを蓄積されないデスクネッツの方が情報漏えいのリスクは低いと考えられます。
実際にテストしてみて一番悩んだのがこのワークフロー機能の差です。
ユーザーから見るとどちらも同じようなワークフローに見えるのですが、管理者側の設定の手間が大きく違います。サイボウズは階層構造の組織情報に乗っ取ってフローを作成する機能が優れています。
一方、デスクネッツNEOは階層組織を作成しても、直属の上司へのフローですらそのパターンの数だけ作成してあげなければいけません。しかもCSVのインポート機能も無いのでワークフローは組織が変わるたびに手作業で作る必要があるのです。
しかし、検証をしながら私は思ったのです。500人以上の組織では、グループウェアにワークフローの機能は求めてはいけないんじゃないかと。
実際、サイボウズのワークフローもまだまだ小規模企業向けといった印象です。
本来ワークフローと称する電子申請はあらゆる経路があり、しかも条件分岐も非常に複雑です。見積り金額が1000万以上でかつ、確度がB以上だったらこっち、といった複数条件の分岐はグループウェアの1機能として提供できるようなものでは無いんです。
実際、ワークフロー専用の製品やワークフローを専門に作っている会社があるくらいなので、現状では他社のワークフローを各グループウェアと連携させるのが一番現実的と言えます。
なんでもかんでも一緒にまとめてしまうと、負荷によるレスポンス低下だって心配になります。
未だに企業ではガラケーを配布しているところが多いようです。そんな企業にはサイボウズのガラケー対応はうれしいところかもしれません。
しかし、次期バージョンでも対応しているかどうかはわかりません。(恐らく近いうちに無くなります)
最悪、ガラケーからもフルブラウザでアクセスすることができるので、ガラケー対応の有無は選定上の大きな問題になりません。
間違った設定で大量のデータを上書きしてしまい、ちょっと前の状態に戻したいという時に便利です。
サイボウズは14日間分のバックアップデータを確保してくれるので安心して運用ができます。
では、バックアップの無いデスクネッツは?というと、メーカー側で対応はしないものの、各種設定をCSV形式で出力しておくことで最悪の場合に備えることができます。
ユーザーアカウントや組織情報など、各種マスターデータと、ユーザーのスケジュールのバックアップがあれば何とかなりそうですね。
しかし、このグループウェアのバックアップは飽くまでもオペレーションミスからの回復のためのバックアップなので、どこまで必要性があるのかは疑問です。
通常バックアップというのは、サーバーのハードウェア障害によってデータを損失した場合を想定するものです。
この点ではどちらも金融庁が要求するレベルをクリアするほどの信頼性の高いデータセンターを使っているので、システム的なトラブルによる復旧の必要性はほぼゼロと考えて良いでしょう。
それぞれのサポートサイトを見比べてみると、サイボウズの方がサポート情報が充実しており、機能の改修・改善にこまめに対応している様子がうかがえます。
ちょっと前は無かった機能がユーザーからの強い要望によってスピーディーに実装に至るケースもあるので、導入後の運用のしやすさに大きく影響します。
しかし、逆に見るとデスクネッツは改修するほどのバグが無い状態でリリースしているために改修履歴が少ないという考え方もできます。
どちらにしても、この2製品はすでに日本企業が求めるグループウェとして完成に近い形なので、今後の大きな改修や改善もありそうに無く、機能改善の頻度によってユーザー側が享受できるメリットも多くはないでしょう。
デスクネッツを扱っているネオジャパンの方が電話対応でリアルタイムに対応をしてくれるので、不慣れな社内SEでも安心感があります。
一方サイボウズは問い合わせ窓口が分散されており、製品の技術的な問い合わせをする際にも、結局メールフォームから問い合わせてくれという案内を電話でされただけでした。
どちらかというとネオジャパンの方がユーザー目線で対応してくれる部分が多く、グループウェアのインターフェイスも習熟速度や直感性の面でユーザーからの評価が高く、日経コンピュータを始め、各種雑誌の顧客満足度調査でもサイボウズより上を行っています。
筆者が比較した2012年現在では、デスクネッツを採用するべきだと思います。
サイボウズのメリットである、ガラケー対応は近いうちに無くなるでしょう。またスマホのオフライン機能やバックアップ運用についても何らかの形で両者の差が埋まるとみています。
長いスパンで見たときに埋まりにくい差として重視したのは、1アカウントの価格と企業の姿勢です。
グループウェアも成熟してきて、どこでも同じようなものが作れるので、今後は機能よりも価格やサポート面で競争していく形になるのかもしれませんね。
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無駄に見えるグループウェアの機能が費用対効果のアピールネタになる |
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